宝石販売指導マニュアル

12 アンティークと宝石の意味

 人の死というものを考えたときに、それぞれの人の気持ちの中で故人が思い出されなくなった時が本当の死であるといわれます。つまり、ある人と十年間会わなかったとしたらその人は当然生きていることを前提にその人のことを考えています。もし、9年前にその人が亡くなっていたとしてもあなたの中では生きているということになります。しかるに、あなたが思い出す限り生きているのです。(あなたの中では)

 宝石は永遠の命です。永い時を経て物語を将来に伝えることも過去を現在に伝えることも出来る唯一の使者といって良いでしょう。縁(ゆかり)のある人が思い出され、忘れられる事なく思い出すための使者として、宝石を携えた装飾品は具体的にその物語を語るものであり、それがアンティークジュエリーの価値でもあると考えます。持ち主が誰であったのかその人がどの様な人生を送ったのかを物語るものであり、その人を偲ぶ物でもあると考えます。人に価値がなくても自分にあればよいと考えます。

商品としてアンティークの価値とすると例えば歴史上の人物の所有品やその縁の人の持ち物であればとなります。ただし、再加工やサイズ加工をすることはオリジナルの所有者の詳細を消却することとなりますので価値を損ないます。所有者のサイズや使用方法が物語を裏付ける訳ですから。人それぞれ価値判断の違いはありますが、客観的価値として考えられることを販売側は考えなくてはなりません。

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