ロード・オブ・ジュエリー
04 キャスト製品
キャスト製品
キャストという鋳造による制作方法は一つの原型により複数の製品を作ることが出来ます。その原型の製作に関しては二通りの方法があります。
第一にワックスを削りだしていく方法です。これは柔らかな素材であるために加工がしやすく、作業時間も比較的短時間で済ますことが出来ます。そのために一点作りに関してもワックスで原型を製作し、鋳造する場合も多くあります。
第二に銀などの地金を削りだしていく方法ですが、これは比較的鋭角的なデザインや爪などを立てる繊細なデザインに向いています。
基本的にはワックス原型も鋳造して地金原型とします。
地金加工または鋳造して仕上げた原型のゴム型を取ります。このゴム型に圧力でワックスを流し込み、たくさんのワックスパターンを作ります。作られたワックスパターンは大量に製作するために複数を集めます。この集められたものを樹木に似ているところからツリーと呼び、この際に使うワックスは原型に使用したものよりソフトなものを使います。
ただし、このケースの場合、繊細すぎるデザインのものはゴム型をカットする時に困難であるために向きません。
キャスト(鋳造)
ここからはキャストが行われていく過程について見てみましょう。
2種類の鋳造方法
先ほど出来上がったツリーで鋳型を作る作業を埋没といいます。ツリーのワックス原型を円筒状のフラスコの中心に置き、埋没材である石膏に沈めます。その後フラスコごと焼成機に入れ高温で鋳型を作成しますが、この際ワックスが溶け出し中が中空状態になります。このとき原型の形が埋没材の中に残っています。
出来上がった鋳型を鋳造機にセットし、溶解した地金を鋳型に流し込み鋳造が終了します。この際の鋳造方法には遠心型と真空型があります。
真空型は鋳型を真空状態にすることにより地金を吸引させます。遠心型は遠心力を利用し溶解した地金を流し込みます。その後急冷し埋没材を除去後鋳肌を奇麗にし鋳造品を取り出します。そしてそれぞれを切り離し仕上げを行い完成品となります。
鋳造する際の注意点
鋳造する際に溶解した地金に気泡などが残り、す(鬆)と呼ばれる穴があくことがあります。時には非常に小さいために見逃されることもありますが、これは大きなす(鬆)の一部が現れ、見えない部分に大きな空洞がある場合もあり、後日損傷の原因ともなるので見逃すことは出来ません。
大量生産のキャスト製品の場合は原型が同じですから完成品も同一のものができます。しかしセットする宝石の形は必ずしも同形であるとは限りません。ただし高額な宝石であっても形、サイズが一致していた場合には何ら価値に差が出るわけではありません。むしろ価格的にはお客様にとってはメリットがあるでしょう。
半キャスト製品
半キャストとはパーツをキャストで製作しそれを手作りの要領でロー付けをし、組み立てていきます。この場合、ある程度の量産が出来、キャストものに比べ仕上げが繊細なものが出来上がります。複数のパーツを組み立てますのでサイズ的にも大きなものを製作することが可能です。ただしコスト的には原型が一つで出来上がるものよりは高くなります。
一回のキャストで出来上がったものは宝石の石座が一種類しかありません。半キャストの場合はセットする宝石のサイズもしくは形状に石座を合わせることが出来ます。ヨーロッパのブランドものでは4個から6個の原型を使用するものもあり、石留めなどが奇麗に見えるのはその効果でもあります。
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